鋼鉄帝国によせて


1991年。ファンの間から後に初代と呼ばれる事になる
オリジナル版の鋼鉄帝国が公開された。
父が筋金入りの鋼鉄帝国ファンだったため
週末はいつも連れられて映画館に行き、少なくとも5回以上は見ることになった。

おかげで周りの友達がアンパンマンや戦隊ヒーローの
オモチャをねだる中、幼い私はエトピリカやゼッペロン、
モーターヘッド軍の巨大兵器の模型を欲しがる
少し変わった子供になった。



2004年。鋼鉄帝国のリメイク作、鋼鉄帝国 fromHOT・B公開。

当時、鋼鉄帝国を愛すること以外は普通に青春を謳歌する青年だったであろう私は
なけなしの小遣いを全額はたいて映画館に向かうのはもちろん、
パンフレット、フィギュア、DVDを片っ端から買い漁った。

お金が足りなくなったらそのつど友達や父から借りて、それを返すために
学校に内緒でアルバイトをしたのも今ではいい思い出だ。



そして2014年。鋼鉄帝国が三度蘇るという話を聞いて
心が躍らないわけが無かった。
しかし、その一方で不安も抱いていた。
と言うのも今回の鋼鉄帝国の制作発表の際、
ミニチュア模型ではなくCGを使うことが公表されたからだ。

言うまでも無く鋼鉄帝国の魅力は精巧なミニチュア模型を使い、
それを惜しげもなく爆破する事で撮影される迫力のある映像だ。
それがCGに出来るだろうか?という不安が常につきまとっていた。

現に一部の心無いファンの中にはネット上で「鋼鉄帝国を汚すな!」と制作中止を訴える
署名活動を行ったり、制作スタッフのブログやフェイスブック、ツイッターを
炎上させる者達もいた。



そんなギスギスした雰囲気の中行われた試写会に私は参加した。
そして、今までの心配は完全な杞憂だったことを思い知らされた。

CGで描かれたエトピリカの雄姿はあの頃のエトピリカと何ら変わらなかった。
それどころかCGだからこそ描けるダイナミックな映像が我々の目の前に現れたのだ。

映像だけでなく現代の音響技術を遺憾なく発揮した音楽、
新たに書き起こされた飛行空母ラインハルトとの最期通信など
強化された演出面も見逃せない。



試写会を見終えた私には断言できる。
これは紛れも無く鋼鉄帝国である。
あの頃の鋼鉄帝国は新たな輝きを得て、見事に蘇ったのだ。


- 映画評論家 橋本鉄平


※注意
ここに出てきた映画評論家 橋本鉄平氏は実在しない架空の人物です。
あくまで鋼鉄帝国が本当に映画だったとして、
そしてそれの熱烈なファンが評論したら。
という設定でお楽しみください。



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